目を突き破って出てきたもの
紀城 有希
見ていたと思っていた
見ているつもりでいた
その表面の乾いた皮
うすっぺらなパリパリの紙のような
それを
本当のすべてだと思っていた
私の同じ乾いた目も
見方によっては柔らかく潤んで
立体感を醸し出していた
見方によっては
何もかもが
潤って 生々しく 生きている
私の目の中の良心のような鬼が、
長い年月で魂のしずくがつくった鍾乳洞の石灰の柱のような塊が、
表からは巧妙な生物(せいぶつ)だが
裏からは無意味な薄い一枚の皮を
突き刺して 破り
外へ出る